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ヴァンパイア攻撃!新生LooksRare vs. 業界大手OpenSea

NFTマーケットプレイスの新たな覇権争いを分析

Coinbase VenturesのAround the Block は、暗号資産の重要なトレンドに着目しています。執筆: コナー・デンプシー(Connor Dempsey) ジャスティン・マート(Justin Mart)、 マイク・コーエン(Mike Cohen) (採用情報

匿名の創業者たちによって構築されたプラットフォームが、どこからともなく現れ、数週間のうちに業界のリーダーに挑戦できるのは、暗号資産の世界だけです。

これはまさにNFTマーケットプレイス、 LooksRare(ルックスレア)のローンチ時に起きたことであり、90億米ドル超という1月の取引高は OpenSea(オープンシー)のほぼ3倍となりました。それに加えて、LooksRareはローンチから30日以内に 3億700万米ドルのプロトコル収益をあげました。同期間のOpenSeaの収益は1億1000万米ドル です。

生の数値データだけでは全容が分かりません…

今回のAround the Blockでは、業界をリードするNFTマーケットプレイス、OpenSeaに対するLooksRareのヴァンパイア攻撃について探ります。

OGヴァンパイアの攻撃

ヴァンパイア攻撃は、暗号資産/Web3特有の現象です。ヴァンパイア攻撃とは、ある種のインセンティブ (通常はトークン) を提供することによって、ユーザーを既存のプラットフォームから競合するプラットフォームに吸い上げる手法を指します。

最も悪名高いヴァンパイア攻撃 が起きたのは、2020年のことです。スシスワップ(SushiSwap)が、業界をリードするユニスワップ(Uniswap)とほとんど同じ分散型取引所を立ち上げました。ただ、1つ決定的な違いがあったのは、ユニスワップからスシスワップに資金を移行したユーザーにSUSHIトークンが配られたことです。SUSHIトークンは、スシスワップ上で徴収した取引手数料の一部に加え、プラットフォームに対するガバナンス権を所有者に提供するものでした。

その結果、どうなったでしょうか。ユニスワップの流動性は一時的に急落し、ユーザーは提供されている最高のインセンティブで利益をあげるために、 12億米ドル の資金をスシスワップに移行したのです。ユニスワップは最終的に回復し、独自のトークンローンチで対応しましたが、新しいDEX(分散型取引所)が比較的短期間のうちに立ち上げられることとなりました。

LooksRareのヴァンパイア攻撃

LooksRareは、以下のような典型的なヴァンパイア攻撃の手口を踏襲しました:

  1. 業界のリーダーを特定する

  2. 競争力がありながら戦略的に差別化されたプラットフォームを構築する

  3. 移行するユーザーに最高のインセンティブを提供する

スシスワップの攻撃とLooksRareの攻撃の主な違いは、スシスワップがユニスワップのコード (フォークとして知られる) とほぼ同一のコピーであり、その上にトークンインセンティブを構築していたという点です。一方、LooksRareは、その 資料によると独自のスマートコントラクトを開発したようです。それ以外の手口は同じです。

  1. 業界リーダーの特定:群を抜いて「OpenSea」

  2. 競合するも差別化されたプラットフォームの構築:looksrare.org

  3. ユーザーが移行するための優れたインセンティブの提供:LOOKSトークン

初期インセンティブはLOOKトークン

ブロックチェーンがオープンソースであることから、LooksRareのチームは過去6か月間に少なくとも3ETH相当のNFTを取引したOpenSeaのユーザーを特定し、彼らにLOOKSトークンを エアドロップ することができました。ただし、ユーザーがこれらの無料トークンを要求するには、まずLooksRareの取引所にNFTを公開する必要がありました。

アクティブなNFTトレーダーの既存コミュニティへのトークンのエアドロップは、NFTが新たなマーケットプレイスに殺到したことにより、有効であることが証明されました。LOOKSトークンはローンチからわずか10日で7米ドル近くまで値上がりし、その過程で時価総額は10億米ドルに達しました。

インセンティブはそれだけではなかったのです…

MOARインセンティブ

LooksRareのユーザーは、最初のエアドロップ以外にも、LOOKSをステーキングしたり、プラットフォーム上でNFTを取引したりすることで、さらに多くのトークンを稼ぐことができます。LooksRareは販売ごとに2%の手数料を課しており(OpenSeaの手数料は 2.5%)、参加者はステーキングする (LOOKSをスマートコントラクトに固定する) ことでその手数料の100%を受け取ることができます。また、取引手数料に加えて追加のLOOKSも獲得できます。

この記事を書いている時点で、LOOKSにステーキングすると、500%以上という目を見張るような年率が得られます。

取引にまつわるインセンティブから、面白くなってきます。それはとてもシンプルで、LooksRareでNFTを売買してLOOKSを獲得すること。すると、その日の出来高に対するパーセンテージに基づいて、毎日リワードが支払われます。現在のリワードは、1日につき280万LOOKS (現在の価格で1000万米ドル弱) 。

これまでのところ、ユーザーをLooksRareのプラットフォームに集めるには無料のエアドロップで事足りており、1日1000万米ドルのリワードはOpenSeaを上回る日次出来高を維持するのに十分でした。しかし、1日あたりの総ユーザー数を見てみると、その出来高に当初ほどのインパクトがないことは明らかです。

ウォッシュトレード

LooksRareが常にOpenSeaの倍の出来高を記録している一方で、OpenSeaのアクティブユーザー数はLooksRareの20–40倍です。このことは、LooksRareの出来高が、LOOKSを獲得するためのインセンティブ制度を利用している少数のトレーダーによって支えられていることを示唆しています。

ユーザーが自分のウォレット間で同じNFTを高額で何度もやり取りするのを止めることはできません。日々のリワードはその日の出来高に対するパーセンテージで支払われるので、例えばその日の出来高の10%までウォッシュトレード(仮装売買)できるとすると、LOOKSで100万米ドルの利益をあげられることになります。

ただし、ここで気をつけたいのは、ユーザーが取引ごとに2%の手数料をイーサリアムで支払わなければならないこと。 計算すると 、トレーダーがイーサリアムで支払っている手数料は、LOOKSで支払われている報酬とほぼ同じです。そのため、トレーダーは基本的にイーサリアムとLOOKSを交換していることになり、今後LOOKSの価格がイーサリアムの価格に比べて高くなれば利益を得ることができます。

基本的に、LooksRareのプラットフォームが成功すればアーリーアダプターが報われる、という興味深いゲーム理論が働いています。

ウォッシュトレードの先に

現時点では、LooksRareの驚異的な出来高が、同社の魅力的なインセンティブスキームの結果であることに異論はないでしょう。しかし、だからと言ってLooksRareが見かけ倒しだとは言い切れません。

今年の1月末、CryptoSlam(クリプトスラム)は1月の出来高の90億米ドルのうち約80億米ドルがウォッシュトレードであると 見積もりました 。しかし、残りの正当なNFTの出来高は、NFTのマーケットプレイスであるRarible、SuperRare、Foundation、Makersplace、Aysncの 2021年の出来高の合計をまだ上回っています。

ウォッシュトレードがなかったとしても、LooksRareのローンチは成功だと考えられるでしょう。LooksRareにはほかにも斬新で面白い特長があり、例えば、個人販売に取引手数料がかからなかったり、NFTのコレクション全体に対し一度にオファーできたりします。何よりも、「実質的な出来高」が 増え続けています

持続可能性は?

LooksRareの取引リワードはこの先2年で終わり、そこからは自分たちの商品とコミュニティだけで競争していかなければなりません。強力なインセンティブなしにマーケットシェアを拡大できるかどうかは、背後にいる匿名のチームにかかっています。

ヴァンパイア攻撃の先達であるスシスワップから、未来を垣間見ることができます。スシスワップは、当初のリワードが枯渇した後も様々な方法によってその地位を保ち続けています。複数のチェーンで革新と展開を継続した結果、今日では50億米ドル近くのTVLを保有しています。

しかし、ユニスワップはそれを奪い返すことをしませんでした。ユニスワップは最終的に独自のトークンをローンチし (OpenSeaもいずれ同じことをするのではないかという憶測があります) 、今日のTVLで75億米ドルを超える資金を調達して、暗号通貨業界の主要なDEXという地位を維持しています。また、ビットコインキャッシュ、イーサリアムクラシックなどの好戦的なハードフォークや、スシスワップ、Swerve(スワーブ)といったヴァンパイア攻撃側が、現役の座を奪ったことが一度もないことは特筆すべきでしょう。

スシスワップは成功を収めましたが、苦戦も経験しています。 中核となるチームとSUSHIトークン所有者の間で起きた内輪もめ により、プロジェクトのCTOを含む何人かの重要なチームメンバーが去っていきました。LooksRareがLOOKSの所有者にガバナンスを渡せば、 DAOのガバナンス がいかに未熟で厄介なものかを思い知らされることになるでしょう。

最後に、LooksRareのユーザーには、匿名のチームには常にラグプルのリスクがつきまとうことを指摘しておくべきでしょう。何よりも、LooksRareのスマートコントラクトは 監査されていない状態 でローンチされ、ギットハブ(GitHub)のリポジトリも公開されていません。トレーダーはご用心を。