Coinbaseのロゴ
ログイン

Around the Block 13:ガバナンストークンの価値とリスク

Around the Blockは、暗号資産業界における重要な話題を取り上げます。今回は、ジャスティン・マートとライアン・イーが、イーサリアムのエコシステムのガバナンストークンについて、その潜在的なバリュードライバー(価値を高める要因)とリスクについて分析します。

潜在的なバリュードライバーとリスク

背景

DeFiは、この12カ月で驚異的な成長を遂げました。預入額、利用者数、取引数、評価など、さまざまな指標が急上昇しています。しかし、このような指標の中には、確認や理解が容易なものもあれば、漠然としたものもあります。一見簡単そうで難しい指標のひとつが評価です。

従来の株式では、評価額は株式そのもの、あるいは企業の所有権の一部と密接に関連しています。株式は企業に対する実質的な支配権に相当し、株主には利益の比例分配(配当)などが与えられます。 

ガバナンストークンとは? 

分散型プロトコルでは「コードが法律」です。そのため事実上の支配権はコードの記載内容そのものになります。そのため、DeFiアプリケーションによって所有権の概念がそれぞれ異なり、プロトコルによって所有権の定義がそれぞれ異なるルールでコード化されています。プロトコルの中には、外部の所有権という概念を持たせないようにコード化されたものがあります。当初に定められた内部ルールに従って運用され、変わらないというものです。しかし、プロトコルを作成するチームの多くは、プロトコルには適合や更新、変更の必要があると認識しているため、一部のパラメーターの調整や変更ができるように所有権の概念をコード化してあります。

「ガバナンストークン」について踏み込んで考えてみましょう。簡単に説明すると、特定のプロジェクトと結びついたERC-20トークンで、選択したパラメーターの調整や変更を行うには、定足数を満たしたトークン保有者の投票が必要です。よって、これらのトークンがプロトコルを「ガバナンス」(統治)していることになります。 

しかし、重要なのは次の点です。

  1. ガバナンストークンは、単独的な支配をもたらすものではないことです。最初からプロジェクトに組み込まれている一部のパラメーターにのみ影響を与えることが可能です。 

  2. プロジェクトによって所有権とガバナンスの定義が異なっていて、どのパラメーターの変更が可能か、またどのように変更が承認されるか、それぞれで決められています。

微妙に異なる事例が数多く存在します。今回は、ガバナンストークンが重要な理由と、注意すべき点を簡単に紹介します。

ガバナンストークンが価値を持つ理由とは

分散型プロトコルにおいて支配権と影響力が重要な理由は何でしょうか。簡単に説明すると、ガバナンストークンによって次のような特権が得られます。

キャッシュフローに関する権利:プロトコルはユーザーに料金を請求できます。徴収した手数料は、ガバナンス投票を通じて、その一部をトークン保有者に配当するように決定されます。株式の配当に似た仕組みです。 

プロトコル変更に関する権利:上記で触れた通り、トークン保有者にはプロトコルの将来を決める投票権が与えられます。大半のプロジェクトで、トークン保有者はスマートコントラクトコード変更、そして資金管理の両方に関して投票できます。

コード変更は、アプリケーションのビジネスロジックそのもの変更といえます。場合によっては、会社の戦略的な方向性を決定する取締役会の投票のような重要性を持つこともあります。このような意思決定に対する支配権と影響力は重要で、一部の関係者は多額の費用をつぎ込むことも厭いません。

一般的に資金管理では、「コミュニティー活動」(有益なプロジェクトや機能開発に資金を供給するための予算決めのような活動)に割り当てられるトークンの割合について決定されます。このような決定への影響力を延長していくと、プロトコルの将来の方向性へ与える支配権ともなります。

将来のトークン配布に関する権利:一般的にはイールドファーミングの形態で、プロトコルユーザーに新たなトークンのミント(発行)を許可しているプロジェクトもあります。これは、プロトコルユーザーにガバナンスを比例分配して、定着率の向上や積極的な関与につなげようという考え方です。一般的にガバナンストークンは、これらのパラメーターを設定するために使用されます。

これまでに挙げた各項目を、既存のDeFiプロジェクトの事例で紹介します。

結局のところ、ガバナンストークンは分散型プロジェクトの所有権に一番近いもので、一般的にこのようなプロジェクトの将来の方向性に対して一定の影響力を持ちます。ほとんどのプロジェクトはユーザーに何らかの手数料を課していて、最終的にその手数料の一部をトークン保有者が受け取ることができます。

ガバナンストークンへの投資時に注意すべき理由とは

ガバナンストークンには魅力的なメリットがありますが、課題やリスクがあることにも留意してください。

トークンの資本政策表を巡る金権主義:通常、トークンの総供給量のうちかなりの部分が創業者やチームメンバー、そして投資家へ割り当てられるため、比較的少数の人に大きな支配権が与えられます。その結果、プロトコルは事質上、民主主義というより金権主義に近い形態になります。チームと投資家の両者への割り当て分を排除し、ガバナンストークンすべてをプラットフォームのユーザーに分配する「フェアローンチ」という方法をとるプロジェクトもあります。しかし実際には、それでもクジラ(大口投資家)が圧倒的な優位に立ち、結果的にポジションが集中する可能性があります。 

米国セントルイス連邦準備銀行(St Louis Fed)のDeFiに関する報告書では、「多くの場合、ガバナンストークンの大部分は少数の人によって保有されていて、ローンチが比較的『公平』であると認識されていても、実際の分配は非常に集中している事例が多い」と指摘しています

投資家やチームを待ちうけるベスティングクリフ(権利確定期間が一気に満了となる崖):チームや投資家が保有するトークンの大部分は、すぐに流動化(現金化)できず、規定のベスティングスケジュール(権利確定期間)中は預け入れたままになります。これが重なり合い、トークンが発行されて取引が開始されてすぐは、トークン供給の大部分が非流動的になります。このように変動分が減少するため、完全希薄化したプロジェクトの価値は、大幅に上昇して見える可能性があります。

この問題に加え、チームや投資家のトークンの一部が一気に流動化される(ベスティングクリフに達する)と、供給が大きく揺れ、ガバナンス投票や市場価格までにも影響が出る可能性もあります。ガバナンストークンに参入する際は、トークンの総供給量やロックアップクリフ(預け入れ義務期間、売却禁止期間)に注意しましょう。

規制強化の可能性:米証券取引委員会(SEC)は、プロジェクトの分散化が進むにつれて、その基盤のトークンを証券として見なす可能性を低くするという指針を発表しています。実際に分散化をどのように定義するかは不明ですが、SECはBTCやETHがこの指針にあてはまっていたと指摘しています。とはいえ、ガバナンストークンを有するプロジェクトについて、SECが今後どのように扱うかはっきりとせず、証券と見なされる可能性もあります。

まとめ

よく考えると、ガバナンストークンは従来の株式と似ています。プロトコルの将来をコントロールできるだけでなく、キャッシュフローを指示したり、配当を受けたりできるからです。しかし、株式との大きな違いとして、ガバナンストークンは範囲が限定されている(ごく一部のパラメータについてのみ投票できる)、多くの場合プロトコルユーザーに対して気前よく提供される、厳密には法的な株式ではないことが挙げられます。 

潜在的なマイナス面を認識しておくことも有益です。各プロジェクトによって、ガバナンストークンの扱いが異なり、初期の変動を抑制するベスティングスケジュール(権利確定期間)などの独自のトークンキャップテーブル(資本政策表)があり、規制遵守について運営組織から独自の評価を受けます。 

ガバナンストークンがもたらす新たなパラダイムに期待できる理由もありますが、まだその進化は始まったばかりです。新たな概念で、進化する可能性が大きい領域なので、調査を怠ることなく着実に進みましょう。