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イーサリアム経済圏の到来

ビットコインに次ぐ巨大な暗号資産(仮想通貨)、イーサリアムは、デジタルマネー以上の存在であり、数十億ドル規模の経済基盤となりました。DeFiからデジタルアートまで、なぜ今イーサリアムが盛り上がっているのか、背景を見ていきましょう。

掲載日:2021年3月2日

2月22日、ニューヨーク・タイムズ紙のビジネス欄に、奇抜な見出しが掲載されました。

「ポップタルトの体を持った空飛ぶ猫のアニメーションに60万ドルで売れた理由。」

2011年頃にインターネットを利用していた人なら、この猫に見覚えがあるのではないでしょうか。ネット上で人気のある「nyan cat」GIF(子猫が虹の上で宇宙を駆け抜けるピクセルアート)の発案者であるクリス・トレースが10年前に製作したミームに、なんと60万ドル近い金額で、買い手がついたのでした。誰でもデジタルファイルを無限にコピー&ペーストできるため、以前はほとんど価値がないと思われていたデジタルコンテンツを、販売していたのはトレースだけではありませんでした。

  • クリスティーは、初の「オールデジタル」作品をオークションにかける計画を明らかにしました。Beepleというアーティストが制作した一連のイメージ作品で、販売価格は100ドルからです。

  • 「Cryptopunks」というシリーズの一部である、クールなローファイ・モンキーが150万ドルで落札されました。

  • 風船ガムで作られたテーブルのような「不可能な家具」の3Dモデルのシリーズは、45万ドルを獲得しました。

  • 起業家でダラス・マーベリックスのオーナーであるマーク・キューバンのツイートが952ドルで取引されました。

現実世界の実際のお金で、デジタル世界の仮想世界の不動産を購入しているのです。この急成長中の市場を可能にしているのが、NFTと呼ばれるカテゴリーのクリプトアセットです。NFTとは、「Non-fungible token」の略で、コピー&ペーストが可能なデジタルファイル(画像、動画、楽曲など、あらゆるもの)のあなたのバージョンが本物であることを証明する、信頼性の高い証明書です。

NFTは、主にイーサリアム・ブロックチェーン上で発行され、イーサリアムの「スマートコントラクト」機能を利用しており、一般的にはNFT専用のマーケットプレイスで売買されています。(現在、大きな話題になっていますが、実はNFTは新しいものではありません。2017年にデジタルキャットの交換ゲーム「Cryptokitties」がブームになったことを覚えている人もいるのではないでしょうか。)

NFTは、ビットコインがトークンであるのと同様に、トークンであり、一般的には、販売をサポートする取引所を介して売買することができます。しかし、個々のコインの特性が同じであるビットコインとは異なり、NFTはそれぞれ特定のデジタル資産を意味します。NFTは、有名人の記念品やNBAの「デジタルコレクターズアイテム」仮想世界の不動産やダンスミュージックのスター、Deadmau5のライブクリップまで、あらゆるものの販売に利用されています。

NFTは、推定売上高1億ドル以上という驚くべきビッグビジネスになったことで、所有権の意味をめぐる哲学的な議論を巻き起こしました。「デジタルアートを収集することは、レアなスニーカーやレコード、あるいはピカソを収集することとそれほど変わらないのだろうか?」

​​またNFTの面白いところは、哲学的な問いを投げかけるだけではありません。NFTに用いられているスマートコントラクトの技術は、現在の金融システムに代わる新しい分散型の金融システムを促進しています。これは、アーティスト、ミームメーカー、ミュージシャンがバーチャルな商品を販売することを可能にし、また個人に経済的な力を与えることに繋がります。この技術技術によって、資本はオープンソースのプロトコルを介して流れ、より速く、安く、透明性を担保したかたちで、全ての人がアクセスできるようになります。これは、「ファイナンス2.0」と呼ばれ、世界中で台頭しています。

イーサリアム飛躍の年

NFTブーム以前は、大半の暗号資産関連記事の見出しは、ビットコインが占めていました。しかし、イーサリアムに関する話題は、業界に精通する人にとって、よりエキサイティングなニュースが多いようです。その理由は、イーサリアムがビットコインに次いで時価総額が大きい暗号資産(仮想通貨)だからではありません。イーサリアムは、単なるデジタルマネーの一種ではなく、コンピュータープラットフォームだからです。イーサリアムのブロックチェーンは、汎用性の高い分散型コンピューティング・プラットフォームとして開発されました。この技術によって開発者は、デジタルアートの取引所などを構築することができ、また現在何千億ドルもの価値があるCompoundやUniswapのような「分散型金融」(DeFi)ツールも稼働させることが可能です。

イーサリアムの人気上昇に関する話題は、ビットコインの時と似ています。ビットコイン同様に、ETH(イーサリアムブロックチェーンの固有の暗号資産)は、価格と人気が急上昇し、300ドル半ばの水準から2月には2000ドルを超える高値まで上昇しました。

イーサリアムも、ここ数カ月で世界的に検索件数が飛躍的に高まっています。(ビットコインは、2017年末から2018年初めにかけて報道が盛んに行われていた時期に比べ、まだ落ち着いています。) 

イーサリアムへの関心が高まっていることを示す指標は、他にどんなものがあるでしょうか。RedditのEthereum(および暗号全般)専用の掲示板では、ここ数日、新規登録者が急増しています。

その大きな理由は、ETHの価格です。驚くべきことですが、2021年に入ってからETHの価格は、ビットコインよりも早く上昇しています。コロナ禍の影響で時間と資金に余裕ができた個人投資家が、新しい投資戦略を試していることが一因です。ビットコインの価格が年初から約65%上昇したのに対し、ETHの価格は112%以上上昇しており、時価総額は1770億ドルに達しています(モルガン・スタンレーやSquareよりも時価総額が高い。)

イーサリアム経済圏を理解しよう

時価総額の急上昇はイーサリアムに関する話題の一部分に過ぎません。イーサリアムの本当の魅力は、ETHと記される暗号資産の価値だけではないのです。

ETHは、氷山の一部のようなものだと考えてください。イーサリアムのブロックチェーンは非常に柔軟で、DeFiステーブルコイン、ラッピングトークン、NFTなどのカテゴリーに応用され、様々な経済活動が行われています。

イーサリアムのブロックチェーン上で発行された主要なERC-20トークンの時価総額の合計は、ここ数週間で2,500億ドル以上にまで高騰しています(正確な比較ができないためNFTは除く)。

ETH経済の中で最も有望で急速に成長している分野の1つである、ステーブルコインは、米ドルのような準備資産に価値を固定することで、ボラティリティーを低減するよう設計されています。ステーブルコインは、取引所間での安定した決済手段として広く採用されています。

2021年2月現在、イーサリアム・ブロックチェーン上のステーブルコインのドル建て総額は300億ドルを超えています。

イーサリアム経済圏の中で、規模は小さいながらも急成長しているのが、「ラッピングトークン」です。イーサリアム以外のネイティブな暗号資産、(特にビットコイン)をイーサリアムのブロックチェーン上で使用可能にし、DeFiアプリケーションとのやりとりが簡単になりました。その結果、トークン化されたビットコインの価値は大幅に上昇しています。

RedditとDeFiの出会い

このような昨今の変化の裏側には一体何があるのでしょうか。もちろん、多くは暗号化のブームに関連しています。しかし、興味深いのは、インターネットに精通したRedditの "memestock "と呼ばれる投資家たちが、従来の金融システムに不満を感じたことをきっかけに、中央集権的ではない投資手段を模索していたことです。

これらの分散型ツール(「DeFi」または「Finance 2.0」とも呼ばれます)は、投資、取引、利回り付き貯蓄、新しい種類の「フラッシュ」ローンなどを可能にします。バーゼル大学の教授兼研究者であるファビアン・シェア氏によると、イーサリアムを使ったDeFiアプリケーションは、"オープンで透明性があり、改ざんできない金融インフラを構築する可能性がある "とのことです

DeFiの世界は、大きく分けて3つのカテゴリーのアプリで構成されています。これらのアプリは、非効率的で遅く、高額な既存の金融システム上の送金手段の代わりに、よりスピーディで効率的な手段を目指しています。

  • UniswapやSushiswapのような分散型の取引所では、ユーザーは仲介者なしでトークンを取引することができます。

  • CompoundやAaveのようなレンディングプロトコルでは、ユーザーは仲介者なしでトークンの貸し借りができます。

  • Chainlinkのようなオラクルは、実世界のデータをDeFiアプリケーションに提供することを目的としています。

ファイナンス1.0時代への信頼が揺らいでいたReddit内の投資家たちは、オンライン上で新しいプロトコルに関する情報交換を熱心に行い、コミュニティーを形成していました。(変化が激しいDeFi市場とリスクに対して寛容なReddit内のトレーダー・コミュニティーは、相性が良かったのかもしれません。)

Wallstreetbets subredditarkが主催したイベントで、マーク・キューバン氏は、DeFiによって「市場がより効率的で透明性が高くなり、小口投資家が利用できるようになる」という考えを述べました。

Redditの共同創業者であるアレクシス・オハニアンも、米国の下院議員アレクサンドラ・オカシオ・コルテスとの対談の中で、分散型金融について同様の考えを述べました。「不正に操作できないシステムを支持する人は非常に多く、今後ますます分散型のソリューションを活用する風潮が強まっていくでしょう。」

このような新しい注目を集めたこともあって、DeFi市場の総額は、2021年2月の時点で400億ドルを超えました。世界最大の分散型取引所であるUniswapが、2020年5月のサービス開始以来、1,000億ドルの取引量を記録したことは、DeFiの普及がいかに急速であったかを示す指標の1つでしょう。

分散型取引所の合計月間取引量は、2021年1月に500億ドルの大台を突破しました。

機関投資家によるイーサリアムへの投資

イーサリアム経済圏は、大手金融機関からも注目されています。取引所やDeFiプロトコル間での資金移動時にボラタリティーがない方法として、ステーブルコインが人気を博していることもあり、イーサリアムのブロックチェーンは米ドル決済の最も人気のある手段の一つとなっています。

2020年、イーサリアムは8,740億ドル相当のドル決済を処理し、Zelle(3,070億ドル)やPaypal(9,630億ドル)などの主要な消費者向けシステムと肩を並べました。更に、Fedwire(840兆ドル)などの中央銀行の決済システムの処理量にもそう遠く及びません。

2020年12月、Visaは、6,000万の加盟店からなるグローバルな決済ネットワークを、ステーブルコインである米ドルコイン(USDC)に接続することを発表しました。(USDCは、CoinbaseやCircleなどのコンソーシアムが支援しています。)

また、Paypalは最近、米国の膨大なユーザーに対してETHの限定的な取引を可能にしましたが、この機能を全世界の3億2500万人のユーザーに拡大する予定です。「現在の金融システムが時代遅れであることは周知の事実ですが、取引が数日ではなく数秒で完了するような未来が来るでしょう。」と、CEOのダニエル・シュルマンは2021年の決算報告会で述べています。「私たちは、このより包括的な未来の創造を支援するために、新しい暗号・ブロックチェーン・デジタル通貨事業部に大幅に投資しています。」一方、機関投資家はイーサリアムに進出し始めています。グレースケール・イーサリアム・トラスト(投資家が従来の証券会社を通じてイーサリアムのエクスポージャーを得ることができる)は、過去1年間で大幅に成長しました。このファンドは現在、40億ドル以上の価値を持つ300万ETHを保有しています。

機関投資家によるイーサリアムのエクスポージャーのための別の手段であるCME先物も、最近稼動を開始し、初日に3,300万ドル以上の取引が行われました。また、2020年12月には、コネチカット州を拠点とするヘッジファンドのワン・リバー・アセット・マネジメントが、「2021年初頭の時点で、ビットコインとイーサの保有額を約10億ドルにする」という目標を明らかにしました。

イーサリアムの進化

創設チームは、2014年当時から、イーサリアムにはいずれ修正しなければならない根本的な欠点があることを認識していました。プルーフ・オブ・ワークと呼ばれる「コンセンサス・メカニズム」を利用しているため、ブロックチェーンのトラフィックが増えると、取引時間が遅くなったり、手数料が高くなってしまいます。DeFiや、今回取り上げたスマートコントラクトを搭載したツールでは、膨大な数のトランザクションが発生するため、拡張性がボトルネックになります。その結果、ネットワークの利用料がますます高額になるのです。。2021年2月現在、1回の取引にかかるETHの「ガス」料金は約10ドルです。(イーサリアムの詳しい解説はこちら)

この課題を解決するべく、非営利団体Ethereum Foundationは、Redditと正式に提携し、技術の解決策や新たなユースケースの開発に取り組みました。2020年8月には、20人以上の開発者チームがReddit内にイーサリアムのスケーリング提案を掲載しました。Optimismrollupsといったプロジェクトの活動によって、ブロックチェーンが1秒間に何十万ものトランザクションを処理できるようになるかもしれません。(ただしそれぞれのソリューションには固有の課題がある。)

一方、イーサリアムのコミュニティ自体は、長期に渡り計画されていた、旧来のものよりも速く、安く、理論的にはさらに安全な、イーサリアム2.0(ETH2)ブロックチェーンへの移行を開始しました。

プルーフ・オブ・ステークと呼ばれる合意形成の仕組みを採用したETH2ブロックチェーンによって、容量が大幅に増やすことができるいわれています。

2020年12月に展開を開始し、2021年2月現在、ETH2.0コントラクトには300万ETH以上がステークされています。そして、この数年にわたるアップグレードが終了すると、イーサリアム経済圏は、あらゆる種類の金融取引をより速く、安く、アクセスできるようにするはずです。