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Around the Block 第5号:今回の市場暴落が下流の融資、ステーブルコイン、DeFiに与えた影響

今回の市場暴落で影響を受けた3つの業界を分析

融資市場:金利を動かす黒幕

暗号資産融資市場は強い支持を得ており、過去数年間で、従来の金融機関と暗号資産ネイティブの商品から推定130億ドルの融資が実行されています。

内容としては、融資市場で参加者は以下のことができます。

  • 自分の暗号資産を他人に貸し、金利の支払いを受けることができる

  • 掲示した担保に対して、一定の金利を支払って暗号資産を借りることができる

これらの市場は、一元的な仲介機関か、資金の損失に対して保証しようとするスマートコントラクトプラットフォームによって提供されます。この領域の企業の主な収益源は、純利ざやで、借り手に提示する金利と貸し手に支払われる利息の差額を得ています。

しかし、融資活動にはリスクがつきものです。特に担保となる暗号資産が大きく変動した場合、借り手がローンを踏み倒す可能性があります。今号では、3月12日に起きた暗号資産の暴落で、融資市場がどのような挙動を示したかを検証します。しかし、その前にまず何が金利を動かすのか 、それがどのように市場の状況と結びついているのか、そのメカニズムを理解する必要があります。

なぜ人はローンを組むのか?

借り手は、何らかの担保を設定し、暗号資産または現金を以下の目的で借用します。

  1. 投機 - 暗号資産にロングまたはショートでかける。つまり、暗号資産を借りてそれで現金を買う(ショートする)か、現金を借りて暗号資産を買う(ロングする)。どちらも投資家にとって、特にボラティリティが高い時期にリターンを増幅させたり、リスクをヘッジしたりするための重要な仕組みです。

  2. 運転資金 - 事業や個人的な事柄に使うための流動資金。運転資金としてのビットコインは、業務を円滑に進めるために多額の資金を必要とするいくつかのビジネス(マイナー、OTCデスク、送金、プロップ取引会社など)にとって重要です。さらに通常、借入は課税対象とはならないため、納税義務を被らずに暗号資産へのエクスポージャーを維持する機会にもなります。

  3. デリバティブの裁定取引 - デリバティブの裁定取引については、より詳しい解説が必要です。例として、ビットコインの先物契約を見てみましょう。これらの契約は、将来のある時点で特定の価格でビットコインを売買する契約であり、これらの市場がどのように価格決定されるかで投資家心理が明らかになります。通常、BTC先物市場は強気で、3ヶ月先のビットコインを売買する価格は、現在のスポット価格より高くなります。

スポット価格と先物価格の差は、キャッシュアンドキャリー取引による裁定取引の機会を意味します。3ヶ月のBTC先物価格が今日のスポット価格より5%高い場合、賢い投資家は今日ビットコインを購入するために現金を借りると同時に、先物市場でショートでかける(3ヶ月後に5%のプレミアムで売却価格を固定)ことができ、今後3ヶ月で20%のAPYを効率良く得ることができます。3ヶ月以上の現金の借り入れにかかる金利が、APR20%(および追加手数料)より低ければ、その差額が利益となります。

クリプト市場の心理は通常、純強気である。Coinbase Consumerの平均出来高は60%が買い、借り入れ需要はレバレッジをかけたロングトレーダーからのネットロングで、先物曲線は通常強気です。このような心理が現金借り入れの需要を促進しますが、市場が弱気に転じるとどうなるのでしょうか。

ひとつは、キャッシュ・アンド・キャリー取引が、クリプト・アンド・キャリー取引に変わり、現金の代わりにビットコインを借りて先物の裁定を取り、直ちに現物市場で売り、先物契約でロングでかけることになります。

先物曲線が弱気になると、融資市場は暗号資産借入に反転し、現金借り入れの需要が枯渇します。

デリバティブ市場の取引規模(大概、50億ドル/日)と時に大きくなる先物価格とスポット価格の差を考えると、デリバティブの裁定取引は通常、借入需要の源となっています。

金利はどう決まる?DeFiの金利はなぜ一般的に高いのか?

他の市場と同様、金利はつまるところ、需要と供給との計算式で決まりますが、より深いメカニズムも存在します。

  1. 暗号資産融資市場は暗号資産を担保にとる:多くの暗号資産機関や個人にとって、最も深い資本プールは暗号資産であり、これが融資を担保する唯一の実行可能な道です。

  2. また、暗号資産を担保にすることは一般的に高リスク : 暗号資産はより不安定で、融資のリスクモデルに適合させることがより困難です。このため、暗号を担保として受け入れる企業の数が制限され(供給の減少)、リスクを考慮して高い金利が要求されます。

  3. ステーブルコインは、その効率の良さから現金よりも好まれる: 現金を暗号資産にアップロードするのには時間がかかります。借入のユースケースの多くは、迅速な対応を必要としているため、選択肢がステーブルコインをすぐに導入できる暗号資産ネイティブのソリューションに限られます。このため、ステーブルコインへの需要が高まります。

  4. DeFiの融資デスクはまだニッチでアクセスが難しい: コンパウンド(Compound)のようなDeFiのサービスにアクセスする方法を知り、リスクを考え抜けるのはそれに関与している人々だけです。今後、この状況は変わっていくでしょうが、現在、供給が制限されていることは変わりません。

  5. そして、スマートコントラクトのリスクを抱えている: DeFiプラットフォームはスマートコントラクトの集合体であり、潜在的に攻撃を受けやすくなっています。リスクが高いほど、金利も高くなる。

以上のことを総合すると、特にDeFiでは、ステーブルコインや暗号資産の借入/貸付金利が通常より高くなります。

これらの金利は、暗号資産の普及が進むにつれて、小さくなっていくだろうと私たちは考えています。暗号資産を担保として受け入れる融資デスクが増え、ステーブルコインの普及が進み、暗号資産とフィアットのブリッジがより効率的になり、DeFiがより主流になり、スマートコントラクトのリスクに対する保護がより強化されるでしょう。それまでは、コンパウンド、ダーマ(Dharma)、Dy/Dxといったところで、ステーブルコインの融資金利における高めのAPYから利益を得ることができます。

市場が暴落したときに何が起こったのか、そして今後何を期待すべきなのか。

現状では、投機、運転資金、デリバティブの裁定取引によるステーブルコインの手堅い借り入れ需要があります。しかし、市場心理が反転すると以下のようになります。

  1. リスクヘッジのため(ショート・ポジションをとる)暗号資産の借り入れが増える

  2. リスクが高まるなか、現金を借りてロングでかける動きは減少: 市場が長期的に上昇すると考えていても、大きなボラティリティがあればすぐにポジションが消滅してしまう。

  3. 先物曲線が弱気に転じる: ステーブルコイン需要が暗号資産需要へと転じる

コンパウンド(Compound)の融資金利は、この切り換わりの大きさを示しています。

市場の心理が強気に戻り、ボラティリティが低下すると、ステーブルコインの借入需要が増加し、以前の水準に達することが想定されます。多くの暗号資産企業は、その成長を高いステーブルコインAPYレートに依存しているため、このことは重要な進展となります。ダルマ(Dharma)リネン(Linen)、そしてマルティス(Multis)のような暗号資産ネオバンクがそういった企業です。

全体として、暗号資産の貸し借りは現在重要なビジネスであり、将来的にも成長する可能性が大いにあります。市場心理は需要を多少左右しますが、全体的な需要は、強気市場でも弱気市場でも高い水準を維持しています。Coinbaseは、借入/貸付の流動性を高め、暗号市場の成熟を支援する目的で、可能な限り借入/貸付サービスを拡大することを検討しています。

ステーブルコイン:ボラティリティがもたらす成長機会

まず、現在の暗号資産でどのように使われているか復習しておきましょう。

  1. 取引・投機用の人工的なドル: 多くの取引所では、真のフィアットサービスを提供するための規制当局の承認が得られていません。しかし、ほとんどの取引や投機活動はフィアットと暗号通貨の間で行われており、ステーブルコインによって、多くの取引所が人工的なフィアット商品を提供できるようになります。

  2. 決済: ステーブルコインは、暗号資産のメリット(高速、グローバル、安価な決済)をデメリット(価格変動)なしで提供し、商品やサービスの決済として利用されることが多くなっています。アジアでは暗号資産の隣接分野の一部でステーブルコインが自然に採用されているようです。

  3. 資本逃避:USDCのようなステーブルコインはグローバルでオープンなエコシステムであり、資本逃避やUSDエクスポージャーとして魅力的なオプションとなっています。

米国政府は本日、新型コロナ感染症による社会不安への対応として、2兆ドルの景気刺激策(ビットコイン市場全体の16倍)を発行しました。さらに銀行の支払準備金要件をゼロにし、連邦金利を記録的に低い水準に引き下げました。一方、金融市場は恐怖にとらわれ、投資家はレバレッジをかけたポジションを管理し、リスクをヘッジし、安定を求めるために、一斉に資産を売りました。

ステーブルコイン市場で何が起こったのか

市場崩落の影響が下流で見られました。

  1. 安全を求める幅広い逃避行動によってステーブルコインの需要が増し、プレミアム価格で取引された

  2. ステーブルコインへの需要を満たし、プレミアム価格で販売するため、裁定取引機関がステーブルコインを鋳造し、発行数が増加

  3. 投資家たちがポジション管理や裁定機会を得るために、取引所間で保有物を頻繁に動かし、チェーン上の活動が爆発的に増加

ステーブルコインにおける価格ショックの大きさとその長さは、ramp取引の効率に相関しています。誰でも簡単にステーブルコインを鋳造し、実際のUSDと交換できるのであれば、裁定取引機関がすぐに平価を維持するために介入し、ショックは短時間で収まるはずです。

テザー(Tether)社に起こったことを見てみましょう。USDTのレールは一番良くはなく、需要がピークに達した3月12日には最高1.05ドルで取引されました。しかし裁定取引により、数日で過去の平均値まで価格が戻りました。

一方、ダイ(Dai)はかなりのプレミアム価格で取引されており、2020年4月6日時点も若干高値で取引されています。これは、ダイエコシステムの根底にあるいくつかの仕組みが直接関係するもので、彼らの清算エンジンが円滑に稼働できてないという失敗がそのひとつです。この失敗により、MKRトークンに400万ドルの資本損失が発生しました(より詳しい分析については、以下を参照してください)。

時価総額については、USDTは、特にアジアで、最も流動性の高いステーブルコインとしての地位を確立しつつあり、一番主流なステーブルコインとしての地位を保ち続けています。

ビットフィネックス(Bitfinex)との密接な関係や、明らかなシャドーバンクの利用、そして部分準備金の使用に関する幾度かの疑いというテザー社の怪しい経歴を考えると、これは多くの人にとって不思議なトレンドです。これについては、業界内でも意見が分かれており、現在テザー社は少なくとも70%の支持を得ていると考えられますが、テザーが1ドルで取引を継続し、リードを広げていることから、市場はあまりこれを気にしていないようです。

またUSDCにとって、これは採用を伸ばす機会でもあります。テザー社に流動性で勝つのには時間がかかりそうですが、他の分野では支持を集めることには成功しつつあります。具体的にはCoinbase Commerceで、CoinbaseのUSDCBootstrap Fundの助けを借りてDeFi内で、そして新興ネオバンクや送金アプリケーションで支持を得てきています。フィアットでスムーズにramp取引でき、安定したUSDCは、しっかりとした後ろ盾があるステーブルコインとして、テザー社以外の時価総額の最大50%を占めています。

ステーブルコインはこれからも存在し、日々その普及が進んでいくでしょう。さらに、市場の大きな混乱は、ステーブルコインの成長機会でもあります。

ステーブルコインの採用は、資本が暗号資産から離れることを意味するものではありません。むしろその逆で、より広範な暗号資産市場への再参入を待つ資本が存在することを意味し、ステーブルコイン普及の有望なシグナルといえます。

DeFi:市場暴落の中、メイカーダオの清算エンジンが壊れる

メイカーダオは、人工ステーブルコイン、ダイを支えるスマートコントラクトDeFiのプラットフォームです。

メイカーダオの機能に関する背景

メイカーダオでは、ユーザーがスマートコントラクトの「Vault(保管庫)」に担保(主にイーサ)を投入し、そのVaultの担保に対して、ダイが発行されます。担保率が150%を下回ると、そのVaultは不履行の危機にさらされます。また、誰でもそのVaultを閉鎖し、担保を競売にかけるチェーン上のトランザクションを発行できます。この仕組みにより、ダイは十分な資本に支えられ、最悪の場合でも1ドルの暗号資産と常に引き換え可能なのです。

市場暴落時にどうなったのか

3月12日、イーサリアムの価格は50%以上暴落し、2018年以来初めて一時100ドルを割り込みました。そして以下の2つのことが起こりました。

  1. いくつかのメイカーダオのVaultが担保不足に陥った

  2. 人々が取引所に資金を移動したり、オープンポジションを調整したりしたため、イーサリアムのネットワークは著しく混雑した(取引手数料が最高2ドルに急騰した)

この2つのことは、下流のメイカーダオへも影響を及ぼしました。通常、Vaultが閉鎖され、担保が競売にかけられる場合、複数の入札者がいます。それにより通常、担保が公正な価格で競売されることが保証されています。しかし価格の暴落は、このオークションへの参加者(「キーパー」と呼ばれる)にも影響を及ぼしたのです。

  1. キーパーたちは多くのVaultを閉鎖し、ダイがなくなったため、バランスシートをすばやく補充できませんでした。

  2. 多くのキーパーは、急増する取引手数料に対応できず、

  3. オークションの落札を迅速に行うことができませんでした。

その結果、3時間の間にオークションに入札したキーパーは1人だけでした。この間、この一人のキーパーは担保に1ドルを入札し、実質的にほぼ無料でETHを購入したのです。

結末と復活

結果的に、1人のキーパーが400万ドルのイーサをほぼ無料で持ち逃げしました。メイカーダオシステムには、ダイを過剰に担保するための資本が十分に入りませんでした。

ありがたいことに、はこのような不測の事態を想定していました。メイカートークンを発行して売却し、不良債権をカバーする第2のオークションプロセスが追加されたのです。

このオークションは最近行われ、Paradigmによってほとんどのオークションが市場価格で落札され、心強い動きとなっています。これは事実上、メイカートークン保有者が400万ドルの希薄化を経験することを意味しますが、ダイは過剰に担保がある状態に戻ることになります。

イーサリアムのDeFiエコシステムはまだ初期段階にあり、決まっていない部分も数多くあります。そのため大きな市場変動が下流への影響をもたらし、意外なことでシステムにストレスが加わることを私たちは想定しなければなりません。今回の場合、メイカーダオに対する日和見的な攻撃でした。これはDeFiの進化プロセスの一部です。大規模なストレステストが行われ、失敗から学び、エコシステム全体が徐々に成熟していくのです。

業界はダイを恐れてはいけません。ダイはエコシステムに深く浸透しており、DeFiにとって重要な要素なのです。メイカーダオの失敗の後に行われたオークションでは、不良債権を回収することに成功し、再び過剰な担保を確保できました。しかしこれは、DeFiの構築者たちが下流リスクを軽減する最善の方法を慎重に検討し、市場の大きな変動によって起こる影響を考慮する必要があることを意味します。