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Around the Block 第4号:最近の市場急落とビットコインのバリュープロポジション(提供価値)について

今回は、最近の市場の動きとビットコインのバリュープロポジション(提供価値)を分析します。

ビットコインや他の暗号資産の価格が3月12日に月初めから50%まで下落し、2013年以来、ビットコイン価格単独で、1日の最大の下げ幅を記録しました。

このような動きは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による経済的影響への懸念から金融市場全体が急落したことで引き起こされ、S&P 500やダウ平均株価が10%近く下落し、1日で1987年のブラックマンデー以来の下げ幅を記録しました。

経済的な混乱が広がる中、安全資産としてビットコインへの信頼が高まっています。ビットコインは、人々によって検証が行われている期間でさえ、他の市場との「相関関係がない資産」であるという考えが広く浸透したにもかかわらず、ビットコイン市場は50%も下落してしまいました。何が起きているのでしょうか。

さまざまな市況を把握

まず従来の金融市場の状況に目を向ける必要があります。2020年3月12日の直前、WHOは新型コロナウイルスのパンデミックを宣言し、トランプ大統領が30日間の米欧間の渡航禁止を発表、イタリア首相が国全体をロックダウン(封鎖)しました。新型コロナウイルス感染症の重大さが認識されるにつれて、世界経済はその衝撃に十分対応できる状態にないことが明らかになり、市場は一気に下降線をたどったのです。

この時の心理を理解することが重要です。投資が急激に落ち込むと、投資家は当然「安全資産」、つまり価値の下がらない資産(通常は米ドル)を求めます。しかし誰もが一斉に出口に殺到すると、売り手の数が買い手の数を大きく上回る流動性危機が発生し、価格がさらに下がっていきます。

資産分配を行う大規模なアセットアロケーターの多くは、レバレッジをかけたポジションを保有し、たとえば実質1米ドルの価値で2米ドルから3米ドル相当の借り入れを行っていました。市場が急落すると、レバレッジをかけたポジションの保有者は支払い不能や強制決済の危機に陥り、米ドルの価値がいっそう上がることになりました。

通常の「売り」と大規模な「レバレッジ解消」(資金回収)が重なった結果、現金化の流れが急激に集中したためです。このようなとき、投資家は売りたいものを売るのではなく、売れるものは何でも売るのです。2020年3月12日はこの事態によって、ビットコインやその他の暗号通貨を含めて流動性の高い市場はどこも深刻な損失を被りました。

ビットコインに起きたこと

ビットコインの急落も似たような理由によります。一部の短期投機家は売りに走り、一部の金融機関は他の場所にマージンコール(証拠金請求)を行うために現金を求め、一部のレバレッジをかけたポジションには強制決済が行われました。しかし、ビットコインが従来の市場よりも急激に下落した大きな理由がひとつあります。それはビットコイン業界のレバレッジの規模と範囲です。  

従来の株式市場のレバレッジは2~3倍までに制限されています。一方、ビットコインは100倍以上のレバレッジを提供するオフショア取引所もあり、1米ドル相当のビットコインで100米ドル相当の購買力を担保できます。ただし、これには大きなリスクが伴います。100倍のレバレッジをかけたポジションは、市場が1%でも不利に動くと、強制決済される恐れがあるからです。そのため、ほとんどのトレーダーは5~30倍のレバレッジでポジションを保有していますが、それでも2~3倍よりもかなり高いレバレッジです。

レバレッジは他の商品にも存在します。たとえば、マイナーはビットコインを担保に融資することがよくあります。また金融業者はBTC預金のための現金融資を提供したり、経験豊富なトレーダーは先物取引にレバレッジを利用したりといった例も挙げられます。

急落前の時点では、取引所で扱う商品のレバレッジ契約の総額は約40億米ドルで推移していました。そのため、この下落は価格に二次的三次的な影響を与えかねないほど大きなものでした。通常、下落の際には積極的な買い手が出てくるのですが、3月12日の混乱では買い手も売り手側に回ってしまいました。価格の下落に伴い、レバレッジをかけたポジションの多くが強制決済に追い込まれたからです。売りが出ても消極的な買いしか入らず、価格が再び下落した結果、流動化(現金化)がいっそう進みました。いわゆるカスケード効果です。

カスケード効果による流動化(現金化)は、レバレッジの高い商品を扱うビットメックス(BitMEX)で特に顕著でした。売りの勢いが止まらない中、ビットメックスのビットコインは、他の取引所を大きく下回る価格で取引されていました。ボラティリティー(価格変動)がピークの時に、ビットメックスがメンテナンスのために取引を停止(DDoS攻撃と説明)すると、ようやくカスケード効果による流動化が一時的に止まり、その後すぐに価格が反発しました。 

一時4000米ドルを割り込んだビットコインは、5000米ドル台半ばで取引されるようになりました。

規制のない環境で個人投資家が法外なレバレッジを利用できることに異議を唱える人もいて、この状態を放置すれば暗号資産クラスに対するリスクになるとしています。3月12日の暗号資産市場は、レバレッジが大きな要因になったように見えますが、暗号資産の成熟に伴い、業界主導の取り組みによる内部からの規制と行政による外部からの規制の両面で、このような力学の働きを改善することが期待されます。

広範囲な流動性危機によって発生し、暗号資産の極端なレバレッジによって悪化したこのような事態が起きたとき、Coinbaseのユーザーはどのように反応したのでしょうか?

下落時から解消直後までの48時間は、過去12カ月の平均値と比較して記録的な数字を出しました。  

  • 現金と暗号資産の預け入れ総額が5倍増の13億米ドルに。

  • 新規ユーザー登録数が2倍増に。

  • 取引ユーザー数が3倍増に。

  • 総取引高が6倍増に。

しかも単なる駆け込み需要だけでなく、次の2つのことが明らかになっています。Coinbaseの個人向け仲介事業者のお客様が下落時に買い手に回り、ビットコインが人気銘柄になりました。    Coinbaseのお客様は、通常でも売却分より60%多く購入していますが、急落時にはこれが67%に跳ね上がりました。ボラティリティー(価格変動)が激しいときでさえ、市場が何度も底を打ったタイミングを活用し、暗号資産に対する強い需要を示したことになります。

ビットコインは、最も人気のある銘柄として、総入庫額・総取引額の両方で過半数を占めました。また他の暗号通貨も人気を集め、イーサリアム(ETH)とリップル(XRP)が人気銘柄の2位と3位になりました。さらに、テゾス(Tezos)やチェーンリンク(Chainlink)といった比較的新しい暗号資産や、ライトコイン(Litecoin)やビットコインキャッシュ(Bitcoin Cash)といった古くからある暗号も人気銘柄になりました。

最後に

暗号資産愛好家の方は、価格の下落が波及して業界を揺るがす事態など想像したくないでしょう。そのような状況下で信念が揺らぐのは人間として当然です。誰もが同じように感じていたかもしれません。

しかし、その背景にはさまざまなメカニズムが働いているのだと分かります。恐怖心で多くの投資家が現金化に走り、流動性が著しく低下した(現金の価値が相対的に上がった)ことで、価格がファンダメンタル価値から乖離し、ほぼすべての資産クラスでレバレッジ解消(資金回収)が発生しました。Bitcoinも例外ではなく、展開されていたレバレッジの規模と範囲が要因となって大きな打撃を受け、流動化の激しい連鎖が起こりました。

この下落以降、株価が下がり続ける一方で、ビットコインやさまざまな暗号通貨のエコシステムは反発上昇しました(2020年3月27日現在:S&Pは6%の下落に対しビットコインは23%の上昇)。中でもCoinbaseのお客様は、下落時もその後も買いを強めていました。

以前にも同じようなことが起こっています。2008年の金融危機では、当初、金が30%以上の下落を記録しました。価値の保存手段として劣っているわけではなく、同じような流動性危機が金にも影響を及ぼしたからです。金融不安の中で金は再び値を上げ、その後3年間で3倍に上昇しました。

ビットコインはこのような時のために作られたのです。ビットコインのジェネシスブロック(最初のブロック)には、「Chancellor on brink of second bailout for banks」(財務大臣、銀行に二度目の公的資金を注入へ)という言葉が刻まれています。2008年の政府による緊急措置と前回の大規模な金融危機に対するオマージュが込められているのです。この言葉の引用は、中央政府を介さない独立した通貨の必要性をさりげなく肯定しています。そして、米国政府が金利の引き下げ、大規模な景気刺激法案の通過、無期限の量的緩和を行うと、すぐにビットコインにビットコイン半減期が発生して反対の動きをしました。これほどまで対照的な動きはありません。

ビットコインは、きわめて強い形態を備えた通貨です。発行枚数はわずか2100万枚で、ネットワークを通じて参加者が共同で所有・管理を行い、そして供給スケジュールや金利の調整に影響を与える中央政府は存在しません。結論として、ビットコインのバリュープロポジション(提供価値)は、外部の市場力学ではなく、価値の保存手段として潜在的な魅力を備えたユニークな特性によって定義されるべきでしょう。