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第14号:DeFi保険

Around the Blockは、暗号資産業界における重要な話題を取り上げます。今回は、ジャスティン・マートとライアン・イーがDeFi保険について深く掘り下げます。

DeFi保険の市場はいったいどこに?

保険は、暗号資産の中でもあまり刺激的な話題ではないかもしれませんが、現在のDeFiに欠けている重要な部分です。流動的な保険市場がないため、DeFiの成熟が妨げられているだけでなく、資金の投入も手控えられてしまっています。その原因を見ながら、保険の提供を可能にする道を探っていきましょう。

保険の重要性

保険は、壊滅的な出来事のコストを社会化して個人でもリスクに挑戦できるようにするものです。人生のあらゆるリスクがありのまま見えるようになれば、人々はもっと注意深くなることでしょう。つまり保険が簡単に利用できれば、新興国の金融市場に資本を投入する自信につながります。

リスクと利回りの関係について見ていきましょう。よく考えてみると、リスクと利回りは表裏一体で、利回りが高ければ潜在的なリスクも高くなるでしょう。少なくとも効率的で成熟した市場ではそれが当てはまります。現在のところDeFiは成熟した市場ではありませんが、潜在的に高いリスクがあることを、大幅な利回りが示しています。

このリスクは主に、DeFiやプログラム上でやりとりされるマネーに固有の複雑さに由来するものです。プログラムコードに潜むバグは、投資家にとって悪夢の原因です。しかもこのリスクを定量化することは、特殊な技術スキルと黒魔術的な推測を組み合わせるようなものです。生まれたばかりのこの業界では、自信を持ってDeFiのリスクをはかることはできません。そのためにも保険が重要です。

明らかに、強力な保険市場は未開拓分野であり、そこが解決されれば、新たな資本をさらに引き寄せられるでしょう。では、DeFi保険の市場規模が拡大しないのはなぜでしょうか。

DeFi保険市場の課題とは?

流動性を確保する際に、いくつかの課題があります。

  • アンダーライター(保険引受人)は誰で、リスクはどのように価格設定されるのでしょうか?どのようなモデルであっても、誰かが保険の引き受けや保険料の値付けをしなければなりません。事実、DeFiは新しい分野で、保険プロトコルが思わぬ方法で破られる可能性もあるため、誰も自信を持ってリスクを評価できません。理想的な安全性の指標としては、たとえば、TVL(Total Value Locked、預け入れ総額)が数百万米ドル単位のプロトコルが長く存続すれば、その分安全性が証明されるという、リンディー効果が挙げられます。

  • アンダーライター(保険引受人)の利回りはDeFiの利回りと競合することが必須条件です。DeFiの利回りがイールドファーミングによって補助されている場合、アンダーライターとして保険を引き受けたり、保険市場に参入したりするよりも、「リスク調整済み」のポジションでDeFiプロトコルに直接参加した方が有利なことが多くあるからです。

  • アンダーライター(保険引受人)の利回りは一般的に保険料の支払いに限定されます。従来の保険市場では、担保を安全な利回り商品に再投資して収益の大部分を得ています。DeFiでは、どんな投資を行えば、プールした資金にとって「安全」だと考えられているのでしょうか。DeFiのプロトコルに投資しなおせば、本来カバーされるはずのリスクが再発します。

そして、保険商品の設計方法にはいくつかの制約が必然的に伴います。

  • 保険市場に必要なのは資本効率性です。保険業務では、たとえば1米ドルの担保で、複数のプロトコルをカバーする保険契約を1米ドル超の金額でいくつも引き受けると効果的です。プールした担保にレバレッジをかけない市場では、非効率な資金運用というリスクを伴うだけでなく、高額な保険料設定になる可能性が高くなります。

  • 損失証明は重要なガードレールです。支払いを実際の損失に限定しておかないと、損失が際限なく発生し、結果的に市場全体が破綻する可能性があります。

これらは一部の例で、微妙に異なる事例が数多く存在します。しかし以上のことから、DeFi保険が扱いづらい理由を理解することにつながるでしょう。

では、どのような保険モデルが有望なのか、どのように比較すればいいのでしょうか。

鍵となるパラメータを見ることで、さまざまなモデルを定義することができます。

  • 個別契約方式か、自由市場方式か:つまり期間を個別に分けて条件を明確に定義して保障する保険契約か、トークンやイベントの将来的な価値をトレーディングする自由市場方式かということです。流動的な保障内容か、固定的な保障内容かということと同じです。

  • オンチェーンかオフチェーンか:DeFiならではの保険の仕組みにするか(この場合、同様の根本的なリスクを抱える可能性があります)、既存のアンダーライター(保険引受人)によって組み立てられた従来方式の契約内容にするかということです。

  • 保険請求への対応:保険請求をどのように処理し、妥当性を誰が判断するのか。支払いを手動で行うか、自動で行うか。保障内容が特定の事象と関連している場合、採算面の誤りと技術的な誤りとの違いに注意しなければなりません。採算面の設計に欠陥があると、意図した通りに規定が運用されたとしても、損失が発生する可能性があるからです。

  • 資本効率性:その保険モデルは、担保の設定を拡張できるかどうかということです。そうでないと、対応可能な保障の金額と価格が必然的に制約される可能性があります。

一部の代表的な事業者とその実績を紹介します。

DeFi保険の具体的なモデル

ハイブリッドな保険市場:ネクサスミューチュアル(Nexus Mutual)

ネクサスミューチュアルは、DeFi市場と従来市場を股にかける相互保険会社(会員になるにはKYC(本人確認)が必要)で、主要なDeFiプロトコルの保障条件を明確に定義した従来型の保険契約を提供しています。保険金請求の有効性が相互会員によって判定されるという、最大10倍の資本効率を備えた資金プール(共同出資)モデルを採用しています。

このモデルは順調に機能し、現在のところ保障で引き受けているTVL(Total Value Locked、預け入れ総額)9億米ドルのうち、5億米ドルを使って大部分のDeFiの保障を運用していますが、今日のDeFi分野では500億米ドル以上が預け入れられていることと比べると、わずかな額といえるでしょう。

予測市場と先物取引:ポリマーケット(Polymarket)オーガ(Augur)

これらのモデルを組み合わせて予測市場や先物取引を構築するプロジェクトがいくつかあり、保険契約の一種として利用できます。

先物取引の場合、自由市場で空売りすることでトークンの価格をヘッジできます。先物取引は純粋な価格変動リスク対策として、満期時(期限)にスポット価格がオプション価格を超えて下落していたときに支払いが行われます。トークン価格の下落には、悪用や攻撃といったさまざまな原因があります。

予測市場は、市場参加者が将来の結果を予測して賭けるオプション市場の一種です。この場合、市場を作って、あるプロトコルが不正利用される確率や、トークン価格が下落する確率など、特定のリスクの可能性を追跡していきます。

オプション市場も予測市場も、保険に利用されることが想定されていないので、このような手段は、純粋な保険事業よりも効率が悪くなり、一般的に資本効率の点(現時点でレバレッジや資金のプール方法が限定的)や、非効率な支払いの点(予測市場はいわば「神のみぞ知る」問題)で苦労しています。

保険市場の自動化:リスクハーバー(Risk Harbor)

DeFiプロトコルの悪用とは、攻撃者の都合の良いようにコードを操作する個別攻撃のことです。プロトコルが攻撃を受けて利用不能に陥りやすい印象も与えてしまいます。そのような攻撃をチェックするプログラムを開発できたらどうでしょうか。このようなプログラムが保険市場での支払いの基盤になるでしょう。

これがリスクハーバーの基本的な考え方です。このようなモデルは、支払いが自動的、インセンティブが一律、よく理解されやすいという点で利点があります。このようなモデルなら、プールした資金を活用して資本効率を高め、ガバナンスにかかるコストを限りなくゼロに近づけることも可能です。

とはいえ、そのようなシステムを設計するのは難しいかもしれません。これは一つの思考実験ですが、取引が悪用されるかどうかをプログラムでチェックできるなら、このチェック機能をあらゆる取引に導入し、悪用された取引を拒否すればいいのですから。

トランシェ方式(区分式)の保険:サフランファイナンス(Saffron Finance)

DeFiの利回りは大きいので、ユーザーのほとんどは、利回りの一部と引き換えに、ある程度の保護を手に入れたいと思うでしょう。サフランは、ユーザーがDeFiプロトコルに投資する際に、好きなリスク特性を選択できる仕組みを他に先駆けて開発しています。たとえば、より利回りが高い代わりにリスクも高い「リスキートランシェ」(リスク優先区分)を選んだ投資家は、何らかの悪用が発生した場合、精算や補償の優先順位で「セーフトランシェ」(安全優先区分)に負けてしまいます。この場合、事実上、リスクを選ぶ参加者がリスクを嫌う参加者の保険料を補助することになります。

従来型の保険

それ以外については、従来の保険会社が特定の暗号資産会社や暗号資産ウォレットを引き受けているので、そのうちDeFi契約の引き受けも開始するかもしれません。とはいえ、アンダーライター(保険引受人)側の原則として、現状では暗号資産商品に固有のリスク特性を適切に評価するのに必要なデータが限られているため、かなり高額になるでしょう。

まとめ

保障内容とその価格設定、DeFiの利回りとの競合、請求時の査定などの基本的な課題だけでなく、資本効率が限られているため、保険はこれまで大きな牽引力を得られていません。

これらの課題を総合すると、最大のボトルネックは、需要に見合った引受資金の確保です。DeFiには500億米ドルが投入されているので、大量の資本と資本効率の高い市場の両方が必要なのは明らかです。これをどう解決したらいいでしょうか。

一つの方法としてプロトコルの保有資金の利用が挙げられます。DeFiプロジェクトの多くは、各プロジェクトのトークン建ての高額なバランスシートを持っています。これらの資金は、かつて擬似的な保険用プール資金として機能し、何らかの悪用が発生した場合の支払いに充てられたこともあります。将来、こうした方法が正規の手段となり、プロトコルとして保有資金の一部を引受資金に充てることになる可能性もあります。そうすれば、安心して市場取引ができ、その過程で利回りも稼げます。

もう一つの方法はスマートコントラクトの監査を通じてです。リスク評価のエキスパートとして、ビジネスモデルの中に監査サービスの追加料金を設定し、その利益を引受資金に充てて評価業務を補う方法です。

どのような方法にしても、重要で避けられないのが保険です。現在のモデルでは不十分な部分もあるかもしれませんが、今後、進化して良くなっていくでしょう。 

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